その他
#宗教施設

京都市の北西部、北野白梅町にある修道院の建替えの計画である。
1950年にアメリカより宣教のために来日したシスター(修道女)たちに、当時GHQに接収されていた旧住友家衣笠別邸の邸宅と敷地が払い下げられた。その後、生活を共にするシスターたちの数も増え、1960年代後半には住友家の邸宅を取り壊して肢体不自由児の療育施設と4階建てRC造の修道院の建物が建設された。時を経てシスターたちの高齢化と減少、医療の専門化などから療育施設と修道院の敷地を分け、修道院の建物を木造2階建てに建替える計画が始まった。既存の修道院の建物を使いながら建設工事を行うため、新たな建物は既存建物の南側の庭園の中に建て、新築建物の竣工後、既存の建物は解体してその跡地を新たな庭園とすることとした。

修道院は修道会のシスターたちが共同で生活を送る寄宿舎であり、かつ祈りや修練を行う宗教施設でもある。諸室の配置計画の際に考えたのは、この建物の中心に聖堂があるべきだということである。施設を居住ブロック、修道会業務ブロック、聖堂に分け、居住ブロックと修道会業務ブロックを互いに30度の角度をつけて開いて配置し、その間に聖堂を挿入した。この配置により、シスターたちは起床後や食事の前に聖堂で祈りを捧げ、日々の折々に聖堂の存在を感じることができる。聖堂は六角形の平面形に変形寄せ棟の屋根が載る形となっている。壁と屋根の間に横長のスリット状の開口部を設けて、不燃木材を貼った天井全体を自然光で照らし、祈りの空間にふさわしい適度な明るさとなるように計画した。また、二代目の修道院建物には、住友家が別邸建設の際にイタリアから取り寄せたと伝え聞くステンドグラスが受け継がれていた。今回の新築建物においても、そのステンドグラスを聖堂入口脇や階段踊り場の開口部で再活用し、過去の記憶の継承を図った。

DATA

所在地 京都府京都市
主要用途 寄宿舎
構造・構法 木造
階数 地上2階
敷地面積 5,550.76m2
建築面積 280.94m2
延床面積 443.06m2
設計担当 岩田恵
構造設計 KAP
設備設計 リサーチ&デザイン設備事務所
施工会社 公成建設
撮影 小川重雄
竣工 2023年4月

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